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  • ATELIER HAYATO NAKAZAWA

『Louis Vuitton』 って書いてあっても気にならない。ハイエンドミュージアム『アーティゾン美術館』の誕生。

ブリヂストン美術館が数年の改装を経てアーティゾンミュージアムとしてオープンしたのが数年前。とかくこう言う時によくあることだけど『前の方が良かった』と言うこと、ありますよね。


特に記憶に新しいのは損保ジャパンの本社ビル内にあった損保ミュージアムが本社ビルの隣に移設されたことでした。本社ビルは地上43階立てで景色も抜群に良くて異世界にいるような心地よさだったのですが、なんか新しい美術館は立地も含めプレハブ小屋が本家の隣にぽつんと立ってるような収まりのわるさがありました。決して安っぽいということはないのですが、どうしてもあの巨大な本社ビルの隣だとすごく小さくオマケみたいに見えてしまい、それが非常にもったいないと思っていました。


対してアーティゾンミュージアムは建物そのものから展示の仕方、調度品、全てが抜群にセンスが良かったです。現状では東京にある美術館で最も良い美術館と思えるくらいの良さで、想像以上に驚きました。

案内さえもおしゃれ。


とかく毎回銀座に行くと銀座は金ないやつは帰れ的な雰囲気が溢れています。 駅の改札なんか電車の運賃が足りていてもオシャレポイントが足りないと改札が開かないんじゃないかと思ってしまいます。


『大変申し訳ございませんがお客様、銀座駅までの運賃は足りているのですが改札を通るためにはあとオシャレポイントが<3,000オシャレ>不足しております。あちらの精算機でゼニアのスカーフかアルマーニのネクタイをご購入ください。そうすればギリギリ通れるかと思われます』

とか言われるんじゃないかと想像して毎回改札がちゃんと開くか心配になります。ひどいやつになると「フルコーディネートで着替えてください」とか言われそうで恐ろしくなります。 もちろん駅員は全員パリコレばりのユニフォームを着こなしています。


そんなイメージの銀座。毎回行くたびに思います。 そしてこのおしゃれハイエンドが集まる銀座にさらにおしゃれなミュージアムが作られました。それがアーティゾンミュージアムです。

オシャレインフレ率、半端無いです。


最近では駅も街も大規模デベロッパーが仲介したところはどんどん似てきて個性がなくなってきている気がします。 けして悪くはないけど特によくもない、あえて言えばみんな均等におしゃれだけどそつがない。 どこかが破綻してるけどどこかは5で突き抜けている。そういった街の個性を均質化してオール3.5的なものが増えている印象がありました。しかしアーティゾンミュージアムはそれがオール5な印象でした。


エントランスも入り口もめっちゃかっこいいです。

会場入り口にあった椅子はあまりにオシャレすぎて椅子なのかオブジェなのかわからず座って壊れたら弁償できないので写真を撮るだけにしました。 誰も座っていなかったけど、みんな同じ気持ちなのかと思いました。

なんか座ってバリンとか割れたら自分のお尻より弁償代の方が心配でした。

オシャレなレストランのアイスとかに刺さってるお菓子みたいなオブジェがありました。

すいません、それより勝手に触って警報ブザーが鳴らないかが心配でした。


トイレも超おしゃれ。

21世紀のマルセルデュシャンかと思いました。


美術館の展示室までまだ行ってもいないのに、エントランスと受付だけでこんなに満足したのは初めてでした。正直これを見て喫茶室でお茶飲んで帰っても全く問題ないくらい素晴らしい体験でした。


この日行われていたのは鈴木理策と芝田俊明という写真家の展覧会です。



美術館に行くと企画展がメインで常設展は「時間があったらついでに見よう」くらいの扱いに往々にしてなるのですが、この美術展は企画も常設も全く同じテンションで見られるというところが凄いところでした。


特に企画展から常設展への動線が良く出来ていて、いかに企画展を見終わった時の気持ちがそこで切れずにスムーズに常設まで繋げるかがよく計算されていました。 見ていて特にすごいと思ったのが企画の部屋と常設の部屋では照明の照度や壁の色、床の色がガラッと変わっていて全く新しい気持ちで別の世界に入っていくような新鮮さがありました。


企画展の部屋

常設展示の部屋


企画展はかなり照明の光量も落として全体的に薄っらと暗くなっている中から写真が浮かび上がってくる感じで鈴木理策さんのような静かな写真を引き立てるためか非常に見やすかったです。

対して企画展は照明もかなり明るく、壁も白でまとめられておりかなり明るい雰囲気でした。

彫刻などがあるこちらの間は天井が吹き抜けになっており5階から階下のフロアーが見下ろせます。

暗めの内観の企画展からゆっくりとエスカレーターを降りて光が溢れる常設への移行は非常に動線がよく計算されており本当に感動的でした。 なお企画展で作家が選んで自身の作品と併設された作品は今まで何度も目にしていたのですが、マネの自画像などは空間芸術としての様相をなしていて本当に素晴らしい構成でした。

建物の四面がガラス張りになっており銀座の街並みが一望できます。

一階からミュージアムショップまでも天井が吹き抜けになっていたりして、見下ろすと一階のカフェで金のプレートで食事してる人とかが見えました。

カフェにいた人はみんなこんな感じで足を組んでいて、心と財布にべらぼうに余裕のある感じの方々でした。


こういう彫刻はなんかいかにもな感じで美術館の中の展示室にドーンとあったりするのですが、摩天楼を背景にしたような設置の仕方がとにかくカッコよかったです。

本場のロダンもいました。

金じゃないやつです(笑)


ちなみに上記の西山美術館の彫刻の展示の仕方もアーティゾンミュージアムとは別の意味で秀逸です。

全フロアーを余すところなく楽しめ、館内はどの位置から見ても全てがカッコよく収まる、『お前は石原裕二郎か』みたいな隙のない美術館でした。

エスカレーターを降りたら、センチュリーの外ナンバー車が家まで送ってくれるんじゃないかと錯覚するような素晴らしい近未来的体験でした。


続いて企画展に移ります!



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